タバコの歴史(前編)

tabaco maya アメリカ

今回はタバコの歴史について書いていきます。タバコの原初である新大陸アメリカから、中世ヨーロッパのタバコ文化や法の仕組みについてなどなど。それから、我々がよく知るような紙巻たばこだけでなく、世界には今でも色んな種類のタバコがあるのだということも含めて。

タバコの発明者インディアン

タバコは西洋人が新大陸アメリカとの出会いの中で発掘された嗜好の新文化である。肌の黄色い文明人が口や鼻から吹き出す煙に抗しがたい魅惑を覚えた肌の白い文明人は、その発明品を彼らの大陸に持ち帰ったのが、ヨーロッパに世界にタバコを大流行させるきっかけとなったのである。

タバコの最も古い歴史はメキシコの遺跡から発見された、パイプのようなものをふかす神様のレリーフから求めることができる。南米の古い文明と言えばマヤ文明であるが、これは現在のグアマテラ、ベリーズ、ホンジュラス、エルサルバドルの西部地域をも含む。

マヤの高度文明は石碑以外にもなんと紙による歴史の記録も残していたのだが、こうした脆い記念碑は白人の宣教師が自分たちの邪教を割り込ませる作業のうえで灰にされた。この時代の紙の材質は、コパという野生の植物の繊維をアマーテの樹脂で裏打ちして作った。石膏でコーティングした鹿皮なども紙の代わりにした。書類の中身は絵や絵文字がふんだんだったらしい。

こうした古代製品で現在も邪教徒の手から逃げ延びて残っている作品のものは『ドレスデンの絵文書』や『パリの絵文書』『マドリードの絵文書』『グロリエの絵文書』が存在する。『メンドーサの絵文書』には、アカジェトルという香りの良いタバコチューブについて言及されている。※画像に関してはこのサイトに素晴らしく紹介されています。

神聖な儀式としてのタバコ

今でこそ単なる個人の嗜好としてとらえられているタバコであるが、先スペイン時代においては、祝宴の時にふかされていたことが知られており、神様への供え物としての役割も与えられていた。人身供犠がまだ行われていた時代には最期の贅沢としてタバコが与えられ、死刑が決まった異教徒の捕虜に対しても同様な温情が与えられた。

またタバコは嗜好品としてだけでなく、しばしば薬用のためや儀式のためにも愛用された。私の昔の会社の上司は、タバコは精神の健康に良いと言っていたが、これは今でも素晴らしい意見だと思っている。

欧米の猿真似しかできない日本カス医者どもはタバコを悪者にする以外の知恵を持たないが、彼らは私達の精神衛生を戦略的に害し、精神病患者を意図的に増やして、抗うつ剤を売るビジネスに傾注している。死ぬべきだろう。

死といえば、死刑の執り行いなどのシリアスなシーンにおいてもタバコはふかされる。それは死罪者への最期の贅沢という目的以外にも、荘厳たるべき儀式の場を清める意味合いにて草が燻されたのだ。タバコの煙は悪い空気を浄化する効果があると信じられていたのだ。

タバコは霊草だった。『ミチョアカン報告書』の罪人死刑の挿絵の中でも多くの人間がタバコチューブを加えている。人が死ぬサマを悦に浸って吸っているのかもしれないし、神聖な場を保つためにタバコの煙を充満させているのかも、今となってはどっちの意味合いが強かったのは分からない。

タバコジュース

タバコ文化の国にあるインディアンのアイデアは、西洋の文明人をたびたび驚かせることができる。タバコを清めの煙に使うのはまだ序の口で、派手なものではタバコジュースなるものが存在した。

これはタバコの葉を茹でるか煙草の葉を噛んで唾液からつくるラブジュースなのだ。三葉ちゃんがもしヘビースモーカーになって後に口噛み酒を作ったら、日本人には合わない味になるかもしれないが、アメリカ大陸の先住民にとってはそれは精の力を呼び起こす魔法の汁となるのである。

実際、現地の男たちは成人式の際にこれを飲まされたし、女も結婚の際にこの攻撃的な青汁を飲むことを勧められた。タバコの精の力は作物の生育や家畜の繁殖を祈願できたのだ。

薬用としてのタバコ

遠い海からやってきた白人たちに見つかる前までは、アメリカ大陸の肌の黄色い文明人にとっては、タバコは霊的な薬用品だった。彼らの文明基準における病気とは、悪魔という実体が人間の内部に潜む類のものなので、治療師(ヒーラー)は聖なるタバコの煙を吹きかけて悪い者を燻り出したりして、悩める患者を救おうとした。

呪術師関連の道を選んだ者は険しい歩みを要求された(呪術師は古代では医者と同列である)。立派な霊力を持つヒーラーとなるために、厳しい断食の後に大量のタバコジュースを飲んで鍛錬するのである。身体の中に聖なるタバコの精を呼び込もうと頑張ったのだ。この職業者の平均寿命はあまり長くなかったのが想像できる。

以上は神霊学的なレメディーをたどっているが、よりギリシア的な解釈でタバコを医術として扱って、人々の身体的困難を解決させようとする発明の記録もあった。

・頭の腫瘍 … 小型タバコを混ぜた石灰を多量に伸ばして患部に塗る。それでうまくいかないなら、腫瘍部を十字に切って膿を出す。そして尿で洗浄する。松脂から作った軟膏を塗る。
・頭痛 … エクソという薬草、もしくは緑色の小型タバコを吸う。頭部はよく覆ってやってタバコの香りに包んでやる。
・嚢腫 … それが喉に出来た時は切開し、小さい芯を除去する。それから小型タバコに石灰と塩を混ぜた物を熱くして切開部に入れる。もし膿んできたら竜舌蘭の葉を刻み乾燥して粉にし、患部に詰めるか湿布にする。

『タバコの歴史』 上野堅實著

ただこれらの療法の記述は8名のメキシコ医師によって調べられたという記録があることから、スペイン人の征服後にヨーロッパ人が行った狂行であることが推察できる。

タバコトランス?!

さて昨今のまじない師はTVに出てきてエラソーな糞の役にもならない説教を垂れて、あなた、死ぬわよと(当人は83歳と長生きした)人に死の宣告を迫るだけの簡単な仕事ですませられるが、大陸の先住民にとっての呪術は命がけだった。

前にも書いたかもしれないが、呪術者というのは古代では王と同じほどの存在で、作物の豊作を占ったり、もっと言えば、豊作を約束するために気合を入れた儀式が彼らに要求されたのだ。本気の儀式のためには、時には術者の精神が平穏から遠く、神がかったものでなくてはならない。トランス状態はそのような時に発動した。

タバコはトランス状態への入眠道具として採用された。強い煙をたらふく吸い込んで、それこそ正気の沙汰でない状態で予言や暗示に満ちた挙行に及ぶ。今でも少数部族が存在する第三文明諸国の村々を歩き渡れば、呪術師のトランスの儀式が見られるかもしれない。

麻薬やタバコはまさにこうした神聖な儀式から採用されるのが出発点であり、タバコの他には幻覚きのこ、チョウセンアサガオ、白睡蓮、ヒキガエルの毒、バルチェという地酒も彼らが預言者になるための催眠器具だったのだ。経口でこれらの効果が薄ければ、浣腸注入も辞さなかった。呪術師との意気込みは我々とは次元が違うのだ。

バルチェ
バルチェは今でもユカタン地方のマヤ人のあいだで愛飲されている蜂蜜酒だ。

ただ厳密な調査から明らかにすれば、タバコにトランスを引き起こすほどの強烈な作用は認められず、(タバコで完全にラリった事がある人は私に報告してください)実際にはインディアンの祈祷師は、オジギソウ類似の麻酔性植物の種子を用いて霊との交信を成功させていたのだという。

ヨーロッパ人とタバコの出会い

ヨーロッパ人がタバコと初めて接触したのは、コロンブスがアメリカ大陸を発見した14世紀頃だと言われている。コロンブス調査団はそこで先住民との交易で匂いの出る草をお土産をもらったのだが、西洋人のタバコ初体験はすなわち葉巻たばこ(シガー)だったわけだ。

煙を体内外に取り入れるという新文化はすぐに受け入れられたわけではない。最初のうちにタバコに病みつきになったのは好奇心の塊である西洋の冒険家たち、次いでは黒人奴隷だ。黒人は新大陸でタバコの大農場でこき使われるために連れて来られたのだ。

白人の支配者たちは好奇心と気持ちよさの追求からこれをくわえたし、黒人たちは日々の労苦からの逃避として聖なる草に救いを求めた。タバコは歴史的な観点からみれば、弱者への救済の光だったのである。

西側の文明人の間では当初、タバコはとっつきにくい存在であった。それは新しいものを警戒しようとする動物本能に近く、警戒した二本足の動物たちに新大陸の文明利器を伝えるためには、野人の流儀に倣ったエクスキューズが必要となった。

中世人のタバコ医学

つまりは医学的な権威である。タバコのムーブメントの発起人となった医師は『農業と田舎の館』の中で、薬草してのタバコの効能を解説している。

それによれば、タバコは潰瘍・疥癬・寄生虫駆除・腎臓結石・歯痛・凍傷・毒矢の解毒・止血・便秘・胃や内臓の閉塞症・頭痛などなどに効くとされているが、中世の医者のこれらの研究が正しければ、21世紀の医学はまるごと入れ替わるだろう。

何しろ、現代西洋医学者のタバコへの当たりの強さときたらないからだ。個人的な経験から言えるのは、タバコが胃に悪いということ。しかし、頭痛を和らげるのやストレスの緩和には素晴らしい効果を発揮する。

中世欧州人がタバコを薬草として扱っていた事実の中でもとりわけユニークなものには、タバコがペストに対しても強力な対抗策なりうると信じていた事だろう。以下に中世代の医師がしたためたタバコの効能を記す。

それは燻蒸によって空気を浄化し、また、唾液分泌によって腐敗した体液を除去する。何故なら、その葉を噛んでもパイプで吸っても、体液は身体の各部位から滲出されて胃に集められ、タバコ接種者の口に昇ってきて、昇華作用に導かれて、つばとして排出されるからである。

『タバコの歴史』 上野堅實著

現実としては今ではペストはネズミなどの害獣が媒介となっている事が知られている。小動物が煙を嫌がって、モクモクする家には近づこうとしなかったのであれば、タバコがペストを防ぐことの一助となっていたのは確かであろう。また、噛みタバコで唾液を促進させ、常に口内の抗菌していた事もペストが経口で侵入するのに、いくらかの効果を果たしのかもしれない。

中世人の言うことだからと、全ての項目に眉をつばをつけてかかる必要もない。経験則として当てはまりそうなものは残しておくべきなのだ。何でもかんでも極端から極端に走るのが、どの時代の人間においても当てはまること。コロナでの現代人の発狂ぶりや中世・古代人の狂態はそれほど大きな違いはないのである。

ちなみに、西洋の冒険者と科学者はかように万能薬を採掘したわけだが、当の原産国の住民にしてみれば、タバコは儀式のための霊草であっても、医術として頼りにおける最適なものという考えには至っていない。

つまりは、タバコ=万能薬説はヨーロッパ人という未開の土人が発明したアイデアであって、そのあとにくる薬害問題はインディアンにではなく白人に求められるべきなのだ。こうした形もコロナのワクチンとまるきり同じである。まあ、タバコは気分がよくなれるのでワクチンの5億倍はマシだが。

中世イギリスのタバコ

イギリスのタバコの流行はパイプスモーキングがイニシャルだった。シャーロック・ホームズなどもパイプをくわえた影絵がよく知られており、英国人のパイプ好きを象徴している。

イギリスにパイプを伝えた貴族はウォルター・ローリーだと言われているが、はっきりした事は実は分かっていない。タバコ嫌いで有名なジェームズ1世による文献からは、ローリー卿が英国にタバコを伝えたような記述は確認できない。

汚らわしい土地で生まれた、そして、みんなから嫌われている一長老が持ち込んだ習慣が、極めて薄弱な根拠によって、どうして歓迎されるのか、余は不思議でならない

『タバコに対する一撃』

王のこの怒りに満ちた文章から汲み取れるように、最初の段階ではタバコはすんなりとは社会に受け入れられていないのが分かる。

ジェームズ1世のタバコへの怒りが冷めたか、彼も新大陸の習慣に馴染んだかしたころ、ロンドンのパイプメーカーのギルドはパイプ製造の独占権を得た。イギリスのパイプ製造技術はその後、オランダに伝播する。ヨーロッパのタバコの形式はイギリスとオランダがパイプ主流となっていく。その他はシガーがポピュラーだった。

ただこの初期形態も長くは続かず、三十年戦争というヨーロッパの大戦の最中で各地の兵隊の交流によって、各国でパイプとシガーの交換が始まる。英蘭のパイプはその他欧州人が知ることとなり、オランダ・イギリス人もシガーの良さを再評価した。

このようにして、中世ヨーロッパのタバコ形式は徐々に平準化されていくことになる。昨今はNOタバコで平準化されつつあるが、本当に最低なディストピアになったもんだと私以外も嘆いているだろう。

中世フランスのタバコとスナッフ

フランスではタバコは特にスナッフ(嗅ぎタバコ)が好まれた。フランス貴族たちは喫煙するタバコの葉っぱ以外にも容れ物に関しても彼らの優雅さを競った。※どうでもいいが英のスラングでスナッフは殺すという意味らしい。

現在確認されているフランス産のスナッフボックスには、金銀・象牙・磁器・貴石貴木などの材質を用いて、腕のよい職人たちに見事な装飾を彫らせたものだった。これらの工芸品は富や地位の象徴する道具として活躍した。流行期には下賜品にぴったりくるものだったのだ。

Louis Charonnat _ Snuffbox _ French, Paris _ The Metropolitan Museum of Art
フランスの金の嗅ぎタバコ容れ

中国にも鼻烟壺というスナッフボトルがある。これは陶磁製のものが中心で、東洋らしいデザインが風流で美しい。ヤフオクとかで購入できるので、陶器が好きな人は回ってみると面白い。

スナッフの吸い方としては、手の甲の親指の根元にできるくぼみに乗せて勢いよく吸い込む。というのが当世風のやり方だったらしい。アル・パチーノだったら、白い紙の上にのせて片方の鼻を塞いで思い切り吸い込んでいたが…あれはタバコじゃない方のものか。

嗅ぎタバコの源流ももちろん新大陸の文明者から探し求めることができる。当時の文明人の嗜好品はY字型のチューブ形状をなしており、すなわちこれを鼻の穴に突っ込むらしかった。

先ほどギャングの嗜好について折に触れたが、インディアンの嗅ぎタバコも実際麻薬に近い材料を使っていた。彼らはタバコの葉以外にもアカシア、ミモザ、ネムリグサ、貝殻で作った石灰といった物も混ぜて、鼻から吸い込む嗜好品を作っていた。

ギャングの場合は快楽といつ死ぬかも分からない人生への逃避が主な目的かも知れないが、古代の先住民にとってはそれは神聖なトランスのためのものであって、周りの人々は神がかりの呪術者の予言に頼ろうとしたし、術者も彼らの期待に応えようと命がけで頑張った。

中世における迷惑な嫌煙家たち

どこの時代にもどこの地域にも、害の少ない愛煙家を困らせようと奮闘する嫌煙者という生き物が沸くものだ。タバコ全盛期であった中世ではとりわけ、このヒステリックで頭のおかしな連中の攻撃は過激だった。

有名例をあげると先述のジェームズ1世がそうであり、職業としては聖職者などが強く反抗した。もともと、快楽悦楽に反対の立場を取ることで自分たちの存在意義を見つけようとする種族なので、タバコは特にやり玉に上がりやすかったのである。

彼らの間では特にスナッフが好まれ、ミサの最中にもかまわずに嗜好にふける者が後をたたなかった。このため司教座の参事会はついに、教皇宛に現状のタバコ問題を訴える書簡をしたためたのであった。

果たして教皇文書が発行される運びとなるが、権力者に対し健全でみずみずしい反抗感を持つ中世人は、偉い人が作った規則を常々無視し通した。その結果、大聖堂の立派な装飾はタバコの煙や喫煙者の唾で汚される。教皇教書が再び発せられたが、建築美術は力なくタバコに汚されていった。

ルール違反に対する刑罰の痛々しさも中世特有のものであり、とりわけロシアなどは喫煙者に対する加撃は甚だしく、不幸なひとたちは鼻腔を切り裂く刑、棒打ち刑、革鞭打ち刑の宣告をされた。

見た目にも最も罪の重い鼻裂きはスナッフ使用者に適用された。タバコの中では副流煙もなく、最も迷惑度の低い嗜好品なのに刑罰が最重というところが、いかにもロシアらしく意味不明で理不尽だ。

タバコはまた火事の原因として叩かれたが、本当にあのちっぽけな種火によって西洋建築が燃えた場合もあれば、悪意のある者が出火原因をタバコのせいにするケースだって多かっただろうことは想像できる。現代であってもタバコは火災の犯人にされやすい。濡れ衣がいくら用意されてあっても、燃えるものは燃えるのだから仕方ないだろう。

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